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喜久醉 松下米50 720mL 喜久酔
「ふる里の米で本物の地酒を造りたい」・・・これは酒造家にとってかけがいのない夢です。 この酒は一人の熱い心を持つ農業青年との出会いから誕生しました。
藤枝市青南町の松下明弘さんが「自分の田んぼで酒造米を作らせてほしい」と 蔵を訪ねて来たのは平成八年春。 彼の米作りは、田おこしをせず、化学肥料を使わず、自家製の有機発酵肥料で土を肥やし、大地に稲をしっかり根付かせるというものです。化学農薬の代わりにセリ・ヨモギ・ドクダミ等の野草の抽出液も使用します。彼はこの農法で栽培が難しいといわれている酒造好適米・山田錦を見事に作り上げました。 田んぼにはこの地で数十年来お目にかかれなかった「豊年エビ」も回帰し、これを餌にする蛙や水生昆虫が集まり、さらにこれらを餌にする様々な鳥が飛来しました。自然本来の生態系が蘇ったのです。私たちも一緒に田んぼに入り、苗を植え、毎日雑草取りをし、収穫の喜びをわかち合いました。山田錦という米の特性も、自然農法の難しさもその価値も、田んぼでじっくり学びました。 この体験を通じ、私たちは「酒造りとは仕込みの冬だけではなく、種籾を選ぶ春から、稲刈りの秋までを含め、ふる里の四季とともに醸していくものだ」と実感しました。 「喜久醉」一筋に四十年間杜氏を務めた富山初雄は、酒米・松下米の真価を仕込みの現場で最初に見出しました。松下米は高精白をしてもヒビ割れず、洗米をしても胴割れせず、良い蒸米になり、理想的なツキハゼ麹が出来たのです。平成十六年の秋から杜氏を引き継いだ青島傳三郎も、この米の性格を肌で感じ、 格別な思いで酒造りに取り組みました。 秋上がりするといわれている山田錦の酒の実力を確かめようと、熟成には低温でじっくり時間をかけました。 そして充分に手応えのある酒に仕上がりました。精米歩合50%の純米吟醸とすることで、米本来の持つ旨味も引き出すことができました。この結果を通じ、私たちは「酒造りは米作りから」という思いを改めて胸に刻みました。 飲む人を感動させる酒とは、感動を知っている者が造った酒だと思います。若い稲作農家の真摯な姿勢に感動し、彼が育てた稲に宿った米の力を受け 継ぎ、「感動を伝えることのできる酒」を目指して造りました。 ふるさとの自然と人の慈愛に満ちた米。 そこから生まれた本物の地酒。 この一杯を、至福の時をどうぞ心ゆくまでお楽しみください。
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